寒さを覚悟して着膨れした我々でしたが、遠野はすでに春の陽気。一面の雪が日差しに輝くのを眺めつつ、思えば遠くに来たもんだ~♪と足取りも軽く、最初の目的地「クイーンズメドウ・カントリーハウス」へ。
今回は、馬と人との共生が長い間行われてきた遠野で、馬と生きることの意味や、運搬や力仕事の担い手としての馬を少しでも知ることが目的の旅でした。
雪にはまって、車が進まなくなるというハプニングに見舞われつつ、なんとか目的地へ到着。我々を待っていたのは、世にも美しい馬たちでした!
ハフリンガーという種のオーストリアの馬たちです。輝くプラチナブロンドのたてがみと、赤茶の毛並みが特徴。早速触らせていただきました。(本当は柵のなかに入るのは危険なんですが…)
「曲がり家」とは、厩舎と住居がつながっている建物で、馬と人がともに暮らすことのできる伝統的な住宅です。クイーンズメドウは、馬を中心とし、エネルギー、物質が循環するモデルを目的としたプロジェクトで、敷地には畑や森、宿泊施設(馬付き住宅)があります。
森のなかで放牧されている牝馬が、森に自生する笹を食べることで、下草整備がされたり、馬糞を畑の肥料とすることで無農薬の米や野菜を生産するなど、馬によって自然にも人にもよい循環が実現していました。
今回、お話を伺った徳吉さん(左)。
畑は一面の雪。敷地はかなりの広さですが、通常は2名、必要に応じてもう2名に手伝ってもらうことで、全ての管理をしているそうです。
美しい馬たちに別れをつげ、午後からは、地元の有識者の方々と、遠野の現状や課題を共有していただきました。
参加いただいたのは、NPO法人「遠野山・里・暮らしネットワーク」の菊池さん、遠野市農業活性化本部、林業振興室長の大里さん、盛岡で馬の生産、育成、調教をされている「80(はちまる)エンタープライズ」の八丸さんご夫婦といった、各分野で活動をしていらっしゃる方々でした。
遠野では、地元での活動を都心に伝え、協業していく術がないとのこと。また、特有の文化や営みが失われている現状を聞き、さとまるとして、どう役立てるかの糸口を話し合いました。
翌日20日は、「地駄曳き」(じだびき)を見せていただきました。
「地駄曳き」とは、馬を使って木材を運搬する作業のことで、遠野では古くから行われていたようです。今では数名(&数頭)でしか行われていない、非常に貴重な作業。何よりもまず、馬の登場でメンバー一同、びっくり!
デカイ!!!
今回、お願いした馬は1.2トンある「第二こうはた」君(名前です)。山の中で伐採した木を何本も運び出すには、まさに馬力のある馬が必要なんですね~。でも、性格は穏やかな馬でした。
作業する山で、木を引くための装備をつけます。昔ながらの木と鉄でできたものでした。
木の下に、板状の鉄を入れ、鍵状の金具を木に打ち込みます。この間、馬は不安定な足場で、じっと人が作業を終えるのを待っています。
掛け声に合わせ、馬がグッと力んで前進しようとすると、静かに木が動きだしました。思わず、メンバーから驚きの声があがります。
雪深く木々の茂る山中では、スムーズに木は運び出せないので、木の下の雪を払ったり丸太を挟んで滑りをよくしたりして、少しずつ動かしていきます。
運び途中でも、止まるように指示されると馬はストップ。主の指示をじっと待つ第二こうはた君。
繰り返し行われる運び出しの作業。人間だったら、3、40人で動くかどうかといった数トンの木も、この馬は一頭で動かしてしまいました!
今回、地駄曳きを見せてくださった見方さん。今年で69歳とのことで、「70歳になってもやってられるかわからないよ」と笑顔で話していらっしゃいました。でも、雪の山道を歩くのは誰よりも速いんです!
今回、地駄曳きを手伝い、この旅をコーディネートいただいた岩間さん。馬の繁殖を行う、遠野のホープ☆
地駄曳きにおいて馬はパートナーですが、同時に自在に操ることもできないといけないもの。信頼関係と主従関係の両方を築くことが難しいのではないかと感じました。ただ、馬によって運搬することで山の奥地まで入っていくことができ、機械での運搬では山を切り崩さないといけないことを思うと、地駄曳きの方が合っている土地もあるのではないでしょうか。
今回は2日にわたり馬の魅力を知ることができ、馬と共生する厳しさと同時に、可能性も感じることができた貴重な旅となりました。